日本語で読めるUSCの映画の教科書
このあいだ、本屋で映画本のコーナーをウロウロしていたら、USCの映画学部で使っていた教科書の翻訳が出ているのを発見、「これがもうちょっと早く出ていてくれたら、あんなに必死になって英語で読む必要はなかったのに」と、ちょっと悔しい気持ちになりました。
先日紹介したシド・フィールドのシナリオ本もそうですが、ここ数年のあいだに続々と翻訳が進んでいるようですね。
そこで、ちょっと気になったので、USCで私が教科書として使った本のうち、日本語訳があるものを調べてみました。
![]() | マッケンドリックが教える 映画の本当の作り方 アレクサンダー・マッケンドリック (著) フィルムアート社 |
これが、つい先日、日本版が出版されたもの。
カルアーツ(カリフォルニア芸術大学)の初代映像学部長で、同学部の基礎を築いた映画監督が書いた「演出の教科書」。
いろいろな示唆に満ちたパート1と、具体的なショットの構成法について書いたパート2から成っていて、私のような初心者はパート2を熟読してから撮影に臨むべき。そして、何度か実際の製作を行ってからパート1を再読すると、いろんなことがものすごく腑に落ちてくる(だからといって、そうそう簡単に自分もできるわけじゃないですけどね)。
![]() | ザ・ムーヴィビジネスブック 第3版
ジェイソン・E・スクワイヤ (編集) ボーンデジタル |
これも今年翻訳が出た本。
複雑怪奇なアメリカの映画産業の内側を、各分野の現役のプロたちが語りおろしたもの。
特にこの最新版は、90年代後半以降激変したビジネス状況をきちんと反映したものになっているところがいいです。
これは自省も込めてですが、日本と商習慣が大きく違うアメリカ映画の世界について、きちんとした共通了解を持つための基本として、読んでおきたい1冊です。
![]() | 映画の瞬き 映像編集という仕事 ウォルター・マーチ (著) フィルムアート社 |
![]() | 映画監督・キャメラマンになる プロフェッショナル撮影技法 ブライン・ブラウン (著) フィルムアート社 |
こちらの2冊は昨年日本で出版されたもの。
マーチの本は映像の編集について、ブラウンの本は撮影について書かれたもの。
マーチの本の第1部はマッケンドリックの本の第1部同様、ベテランが自分の経験を元に、テクニックの極意についてエッセイ風に語っているので、読み物としてはおもしろいけど、基本的な編集技術がないとあまり教科書的な意味はないでしょう。ただし、一度自分で編集作業を経験してから読むと、いろいろと示唆に富んでいてすばらしいという点もマッケンドリックの本と同じ。
一方、デジタル化によって実現したノンリニア編集について書かれた第2部のほうは、今や現場の人たちにとっては当たり前すぎてそれこそ意味はないかも。
まったく編集というものについての知識のない人にとっての初読書には最適かも。
ブラウンの本は、動画撮影についてのありとあらゆる基礎知識を詰め込んだ欲張りな本。
その分、各章の記述がタイトでもうちょっと詳しく説明して欲しい気もしますが、常に具体的なところが頼もしい1冊です。
さて、以下はすでに何年も前に翻訳されていた本です。
![]() | 演技のインターレッスン 映像ディレクターの俳優指導術 ジュディス・ウェストン (著) フィルムアート社 |
![]() | サンフォード・マイズナー・オン・アクティング ネイバーフッド・プレイハウス演劇学校の1年間 サンフォード・マイズナー (著) 而立書房 |
この2冊は、日本に帰ったときに、とっくに翻訳が出ているのを知ったもの。とほほ。
いずれも、俳優の演技、特に、いわゆる「メソッド演技」の手法について書かれたもので、特にウェストンの本は演出家(監督)がいかに俳優にアプローチすればスムーズに進むかについて、俳優の立場から説いているのが特徴的。
良いか悪いかはともかく、アメリカではメソッド演技が映画俳優たちの演技手法の主流となっており、もはや一部の有名アクターズスタジオ出身者のみならず、演技を習ってる人たちは猫も杓子もメソッド演技をかじっていると言ってもいいかもしれません。
そういう状況下で、俳優を相手にコミュニケーションを図るには、演出家の側もメソッド演技の基本的な用語と手法を知っておいて、共通の言語で話し合うことが大事になってくるわけです。
……実際にはメソッド演技なんか興味ないと思ってても(笑)。
![]() | 映画監督術 SHOT BY SHOT スティーブン・D・キャッツ (著) フィルムアート社 |
![]() | 映画監督術〈2〉 cinematic motion スティーブン・D・キャッツ (著) フィルムアート社 |
この2冊は、渡米前に買って持っていったもの。
この2年半で一番お世話になった本でもあります。
なにしろずぶの素人なもので、脚本を分解してカットやショットのレイアウトやつながりを考えるときの、基本がまったくわかっていなかったのです。
そこで、プリプロダクション中はいつもこの2冊を脇に置いて、カメラの配置や動きに迷ったときは、何度も参照しては自分の考えをまとめる助けにしています(現在形(^^;)。
また、原書と日本版を見比べながら、「こういうときは英語でどう言えばいいのか」をチェックできたので、撮影時にクラスメートたちと話すときにもずいぶん助けられました。
![]() | 映画監督という仕事 ディレクターズ・クローズアップ ジェレミー・ケイガン (編集) フィルムアート社 |
アカデミー賞を受賞した監督たちのインタビュー集。個人別ではなく、収録したインタビューをテーマ別に再編集しているので、個々人の考え方の違いがよくわかっておもしろいです。
演出に唯一の正解はなくて、本人が一番やりやすい手法を見つけることが大事だということを認識させてくれる本。
![]() | マスターズオブライト アメリカン・シネマの撮影監督たち デニス・シェファー (著) フィルムアート社 |
アメリカの映画製作システムの中でも、日本と大きく違う点は、「撮影」と「照明」が分業化されていないことです。
つまり、撮影監督が照明についても自らコントロールしているのです。
本書は、そんなアメリカの撮影監督たちに、それぞれの経験から「撮影と照明」について語ってもらったインタビュー集です。
この本は、ずいぶん前、刊行時に買って、初めて読んだときは、書かれていることがほとんど理解できず、途方にくれてしまったものでした。
結局、教科書の一つとして、英語で再度読む羽目になってしまったのですが、今度は少なくとも「自分は照明の何がまだ理解できていないか」が具体的に言えるくらいには、中身が読めるようになってました。
というわけで、初心者にはかなり高度な本ですが、蘊蓄たっぷりで読み応えがあります。
もちろん、どれだけ本を読んでも、良い映画が作れるようにはなりません。ま、今の私が良い例でしょう。何本短篇撮っても、いまいち自分で納得できるところに辿りついてないもんなあ。(^_^;
でも、機材だけを手に、何の予備知識もなくがむしゃらに映画を作ろうとするよりも、先人の知恵に耳を傾けることは、大事なことだと思います。特に「さて、ここからどうしよう?」と判断に迷ってるときは。
というわけで、以上、日本語で読めるUSCの映画の教科書類でした。
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