« 授業初日その2「長篇脚本執筆」 | トップページ | 『ドレスデン・ファイル2 狂った月』 »

2008年8月28日 (木)

「演出テクニック」授業初日

Dsc00714b 昨日は、「演出テクニック」の授業初日でした。これは前学期の「演出・中級」に続く「監督のための授業」です。ちなみに、このあとさらに「演出・上級」という授業もあって、そちらは来学期に受ける予定です。

 さて、前期の「演出・中級」が「俳優に芝居をつけること=オーディション>リハーサル>ブロッキング」が主眼だったのに対して、今回は「どう撮影するか」が主眼になるようです。
 つまり、あるシーンにおける、セット上での俳優とカメラの位置、移動、カットの割り方を、実習しながら身につけていこうというもの。

 先生は、テレビドラマの監督として数十年の経歴を持ち、かつ現役バリバリで今も仕事中の大ベテランでした。
 常に立ったまま、早口でしゃべりながら、皆の注意を集めるさまは、まさにたたき上げの現場の職人さんといった感じ。

 いきなり、
「この授業は大変だ。課題は多いし、なによりわたしは遅刻は好まない。ここでは、業界と同じ基準で動いてもらいたい。でも、この授業はすばらしい体験になることはまちがいない」
 とまくしたて、
「問題は、わたしは今も仕事してるんで、来週からしばらくシカゴに行ってしまうことだが、その間、ちゃんと代理の先生は呼んである。また、折に触れ、現役の監督やショウランナー(テレビ番組の製作総指揮の人)を呼んで、話を聞くことにもしている。さらには、10月にはパラマウントでわたしが撮影しているときに、見学にも来てもらうつもりだ」
 と続けたのを聞いて、キツそうだけど、確かにおもしろそうだと思いました。

 そのあと、1時間半にわたって、先生は監督の心得を語ったのですが、ここでも、いかにも現場の人らしい発言が連発して、むちゃくちゃおもしろかったっす。
 中でも、
「(イマジナリー)ラインというのは、基本的なルールだ。ルールは変えることができる。要は、いかに印象的なシーンを組み立てて、観客の注意を惹きつけておくかだ」
 とか、同じように、
「ワイドショット、ミディアムショット、インサートなんていう、標準的なショットの組み立てなんかどうでもいい。我々が恐れるべきは、客が先のシーンを予測してしまうことだ。そのとたん、相手は画面から注意をそらしてしまう。我々はいかなる手段を使っても、お客の意識を画面にくぎ付けにするんだ。ルールのことは忘れていい。我々は監督だ。監督がルールなんだ」
 さらには、
「マルチカメラ(複数のカメラで同時に撮影すること)は楽しいぞ。なにより、すべての俳優の注意を一度に集めることができる。バラバラに撮っていたら、役者の意識が集中するまで、それぞれのショットごとに何度もリハーサルを繰り返さないといけない。マルチカメラなら、全員の気持ちを同時に高めていける。これがすばらしい」
 なんて言ってて、まさに「ER」以降の、最近のテレビドラマの監督をしている人らしくて、納得してしまいました。
 なにより、この1年半、ずーっと基本に忠実に教えられてきたので、ようやく、今のリアルな映像の作り方っぽい話になりそうで、期待大です。もっとも、厳しそうだから、かなりビビッてもいますが。

 もう少し、印象的な言葉を拾っておくと、
「物語はもはや再発明できない。新しい物語なんてもうどこにもないからだ。でも、新しい語り口は再発明できる。常にそれを念頭に置け」
「監督は、常にすべての準備を済ませておくこと。そのためにも、画面の構成はシンプルかつクリーンを心がけておくこと。グチャグチャと煩雑なショットを山のように使うことは、プロの仕事じゃない」
「セリフで物語を語らせるな。動きを撮るんだ。『グラディエイター』の冒頭を見ろ。セリフのない数シーンで、主人公の性格とその先に待ち受ける運命を、見事に語っているじゃないか」
「監督が、撮影前に恐怖を感じるのは当然だ。だからこそ、常に準備を怠らないこと。そして、現場では「コントロール」が一番大事。スタッフをコントロールするのでも、俳優をコントロールするのでも、現場をコントロールするのでもない。自分をコントロールするのが大事なんだ。何があっても、つねに落ちついて、悠然と構えてみせること」
「監督は現場に一番乗りした方が良い。そうしたら、集まってくるスタッフやキャストの様子がよくわかる。誰がやる気があって、誰にはないのかも、一目でわかるぞ」
 等々、じつに趣があるでしょ。

 そして、授業の後半では、いきなりその場で監督役を立候補させて、簡単な撮影の実習をおこないました。

 監督に立候補した生徒が、与えられた3つのシナリオから選んだのは、なんと「ヒーローズ」の、ヒロが初めて自分の超能力を意識的に使い、会社の時計が1分だけ過去に戻るシーン。
 これは、と思って、わたしはヒロ役に立候補してしまいました。教室内爆笑。(^_^;
 でもって、ヒロの友人のアンドウ役は、やはり非日本人ということで(?)、チリから来てるアランくんに。
 でも、シナリオ見たら、セリフが全部英語なんですよ。そうか、「ヒーローズ」の日本語のセリフは、ヒロ役の日本人俳優が全部自分で勝手に日本語に直してるって、テレビで言ってたっけ。と、そのとき思い出したのでした。やれやれ。(^_^;

 さて、この実習、ヒロとアンドウがオフィスで話している簡単な場面なのですが、これをどういうふうにカット割りするかを、なんとカメラを5台使って、やろうというもの。
 なるほど、確かにこれなら、一度ブロッキングしちゃえば、最小限の回数で全部のシーンが撮れちゃいますわな。
 確かにこれだけのカメラについて同時に考えるのはすごく大変だけど、いよいよこの授業が楽しみになってきました。

 しかも、先生曰く、
「この授業は、失敗して良いんだ。全力を尽くすことを期待しているし、君たちに期待するバーは高めに設定しているが、だからといって、自分が出来る範囲でまとめてほしくない。逆に今まで自分がやらなかったことに挑戦して欲しい。そうやって試せるのは学生のうちなんだから。アクションシーンがやりたいというなら、スタントマンを用意する。動物が使いたいなら、同様だ。とにかく、自分を試して欲しい」
 とのこと。恐いような楽しみなような、なかなか手強そうな感じです。

 そんなわけで、とりあえずの宿題は、自分の好きな映画のシーンを選んで、ブレークダウンを書いてみること。たぶん、アクション・シーンとかがいいんだろうなあ。
 さらに、実習をおこなう順番もその場で立候補制で決められました。あんまりあとになっても大変そうだし、かといって勝手もわからず一番にやるのもしんどい(何より、他の授業の宿題との兼ね合いもある)ので、3番手に立候補しておきました。さて、それが吉と出るか凶と出るか。
 何はともあれ、やるしかないない。

 写真は、先生が黒板に書いていた、シーンを構成する要素。これもなかなか蘊蓄があります。

|

« 授業初日その2「長篇脚本執筆」 | トップページ | 『ドレスデン・ファイル2 狂った月』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98716/42297620

この記事へのトラックバック一覧です: 「演出テクニック」授業初日:

« 授業初日その2「長篇脚本執筆」 | トップページ | 『ドレスデン・ファイル2 狂った月』 »